学会について
ABOUT趣意書
わが国の企業組織や各種経営体を取り巻く近年の環境変化は、組織と人間の新たな関係の構築を求めている。現在の環境変化の潮流は、従来の量的側面での変化を超え、質的側面でのパラダイム転換の様相を呈している。バブル経済の崩壊に伴う拡大成長路線の終焉、未曾有の経営のグローバル化と組織の国際化、生産・サービス・経営管理における経営情報技術の進展、自然環境保護と共生意識の高まり、高齢者・女性・若者・外国人等組織構成員の多様化など、変化の波は年々高まり複合の度を強めつつある。このような環境変化に対応していくため、現在多くの経営体は古い枠組みから脱皮し、新しい行動様式を獲得すべく、経営の建て直しや組織の再構造化を始めとした、厳しい試行錯誤を続けている。このような環境変化の下では、今まで国際的な称賛の的であった日本型経営の諸制度も、変化の波を免れることはできない。更にこれらの環境変化は、わが国企業を先例のない、未踏の経営フロンティアへと導きつつある。
以上の状況下では、創造性と自己変革能力が強く求められる。西欧で開発された問題解決の技法を模倣・改善し、手っ取り早くそれを自己の問題解決に活用する便法は、もはや限界に達している。これからは、絶え間なく変化する環境の中で、組織と人間の最適な関係の再構築を求めて、独創的かつ実証的な研究を活発に展開していく必要がある。そのためには、独自の問題意識と理論展開に基づき研究仮説を構築し、実証的データによる検証を踏まえて現実の問題に深く切り込む、経営行動科学による創造的問題解決活動が強く求められる。経営行動科学においては、「経営とは人間と組織の最適な関係を構築し、維持し、必要に応じて変革を実践する活動」と定義される。それ故経営行動科学は、この人間・組織の最適な相互関係のあり方を追求する実証科学、として位置づけられることになる。組織と人間を取り巻く旧来の枠組みが大きく変化していく現在、このような経営行動科学の方法は研究者や経営実務家、労働界、行政担当者など多方面の関係者にとって、共通の関心事とならねばならない。その理由はこの方法の下では、独自の問題意識に立脚した理論と仮説が提出され、実証的データの収集と分析に基づき仮説検討が行われ、そこから斬新な問題解決行動を提案することが可能となるからである。伝統的な問題解決法の効力が減退し、模倣可能なモデルが消滅しつつある現在、経営行動科学の方法は、創造的な問題解決を生み出す知識創造技術の一つとして、研究者・実務家双方の協力の下に、新たな人間・組織関係のパラダイムの創造に向け、本格的に推進される必要がある。
経営行動科学の研究においては、経営における行動主体(経営組織、集団、個人)の活動が全ての分野、例えば、経営行動と組織構造、生産・研究開発・販売等をめぐる組織行動、集団と個人の行動、人的資源管理、組織における適応行動、経営の国際化とコミュニケーション等において、実証的・科学的に究明されることが期待される。またこれと平行して、旧来のパラダイムを超える新たな理論的枠組みの構築をめざし、学際的及び産学協同的アプローチに基づく、研究統合化の努力が求められる。
以上が経営行動科学学会発足の趣旨である。発起人有志は1985年以来過去12年間、このような趣旨に賛同し経営行動科学研究会を組織し、年2回の機関「経営行動科学」の刊行と、定期的な研究発表活動を行なってきた。今回の学会としての組織の公式化は、研究、教育、研究者育成、経営実務、経営コンサルティング、出版活動などの各分野において、より一層の経営行動科学の発展を期することを目的としている。また、これを期に経営研究の国際化をめざして、海外の研究者や研究団体との交流をも促進したいと考えている。各方面のご理解とご賛同を、切にお願いする次第である。
1997年9月経営行動科学学会発起人一同
学会紹介
INUZUKA, Atsushi.(2020). “ADMINISTRATIVE SCIENCE, THE JAPANESE ASSOCIATION.“ Information Bulletin of The Union of National Economic Association in Japan, No. 40, pp.9-15.
https://www.ibi-japan.co.jp/gakkairengo/htdocs/nenpou/pdf/no_40.pdf#page=15